およそ1年にわたり、靴に関する長年の悩みや想いとこれでもかと向き合い、フルオーダーメイド靴の制作過程をリポートしてきました、恵比寿OLのシュー子です。
ああ、ついに、この日が来てしまいました。まさに “夢にまで見た”、長いこと楽しみにしていたフルオーダーメイド靴の完成品を受け取ったその日に「来てしまった」なんて言うのは自分でもおかしいと思うのですが、正直なところ、そういう心情なのです。
というのも、今回わたしが手にしたモノは “ただの靴” ではなく、老舗(フルオーダーメイド靴を日本で最初に作ったダイナス製靴株式会社)の靴職人・印南淳さん(1965年発足のシューフィッター養成認定機関FHA会長)にあれこれ相談して作っていただいた靴であって、言ってみれば “モノ以上のモノ” なんですね。
雑誌やWebサイトなどで「ひとつひとつ手作り」と書いてある商品をよく見かけます。そしてそういう写真を見ると「やっぱり職人さんが作るモノは素敵だよな」なんて思うわけですが、フルオーダーメイド靴の場合、そこにさらに「“わたしのために” 作られた」という魔法のような現実が加わるのです。
初めて履く靴(それも7cmヒール)なのに痛くない。その上、色や形もわたし好みだなんて…… “モノ以上のモノ” としか形容のしようがありません。それが今、手元にあって嬉しいと感じる一方で、“心待ちにできる期間” が終わってしまい、ちょっと寂しくなっているという複雑さ。わたしのこういうところ、親友のNちゃんなら分かってくれると思います(笑)。
さて、改めて振り返ると、1年前のわたしは「新しい靴というのは、絶望的に痛く・歩きにくい期間を経て、なんとか徐々に自分の足に合うようになっていくモノである。また、ヒールを履けるのはヒールを履くのに適した足の人なのだ」と思っていました。それが今では「初めて履いたときに、自分の足を見知っているような靴に出会った。そして、わたしの足でもヒールは履ける」という結論に至ったのですから、すごいことです。
この1年は、これまでしてこなかったことをたくさんしました。足の形やサイズをちゃんと計測するところから始まり、フルオーダーメイド靴を作る目的を定め、形や色を決めて、木型を作っていただき、問屋さんでヒールを選び、「試し履き」をし、その間には都内の靴屋さんを見て回る果てしない日々とか、ため息をつきながら靴の断捨離をしまくる切ない休日を過ごしたり、メイクやファッションの見直しもしたりとか……思い出しきれないけれど、これまでなおざりにしてきたところを意図的に変えました。
しかしながら今日、1年かけてできた完成品を履いたわたしの感想は、“うむ、ぴったりである。綺麗なネイビーブルーでよかった” という、実にあっさりとしたものでした。なぜなら Vol.10 https://www.shoe-tree.net/special/ebisuolvol-10/ で書いた通り、「試し履き」の工程があったので、完成品が足に合うのは、もはやわたしにとって当然のことだったんですね。(……と書きましたが、普通は体重の増減があったりして、完成品のお渡しのときもちょっとした調整が必要だそうです。わたしは基本的に体重が増減しない身体なので、その調整自体が不要という、どちらかといえばレアなケースだったとのことでした)。
あ、そういえば! 「試し履き」の段階で、中敷の色を選んだり、靴底に滑り止めを付けたり、靴の内側に自分の名前をローマ字で刺繍するなど細かなデザインの調整もお願いしていまして、それらが反映されているのは今日初めて確認し、そこは「わー、いい感じ」と喜びました。ちなみにフットベルトは、靴が緩くなったときや早歩きしたいときに付けるもので、デフォルトで使うものではありません。
また、ダイナスさんのフルオーダーメイド靴では「試し履き」用に作った靴(わたしの場合は黒でした)もいただけるので、実質、わたしはネイビーブルーと黒の2足を手に入れたことになります。ネイビーブルーはお出かけやパーティー用で、黒は冠婚葬祭用にちょうど良く、これまた嬉しいのでした。
というわけで、最終回では派手に喜ぶというより、じんわり喜ぶ感じになってしまいましたが……自分が好きな色(ネイビーブルー)の靴を見て思ったのは、“これからはこの靴を基準に、とっておきの服や鞄を選ぼう” ということでした。ちなみに今日も、普段なら着ないようなワンピース(靴にふさわしい服)を選んで出かけて、それだけで背筋がピッと伸びるのを実感していました。
ダイナスさんのフルオーダーメイド靴は、必要に応じてメンテナンスをしていれば一生履けるそうなので、大切に、大切に履きたいと思っています(わたしは物持ちがいいので、お任せあれ、という感じです)。
最後に。
「恵比寿OLシュー子」と名乗りながら、ぜんぜん恵比寿OLっぽいことは書けませんでしたが、フルオーダーメイド靴を作るにあたり考えていたことはほぼすべて書き尽くしたと思いますので、足や靴のことで悩んでいる方のご参考にしていただけると幸いです。ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
End.